1か月で間に合わせる!測量士補ミニ講座⑤多角計算/点検計算/成果等の整理
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ミニ講座5回目,本日は「多角計算」と「点検計算」,「成果等の整理」です。
これで「多角測量」の分野終了です。
▼動画です!
■多角計算
測量によって得られた角度と距離を用いて,既知点の座標値から新点の座標値を求める計算を多角計算(トラバース計算)といいます。
測量士補試験では座標計算と方向角計算が出題されます。
座標計算については,三角関数(以前の「三角関数を使った測量士補試験の計算問題」の記事で大丈夫です。),方向角計算については度数法の足し引き計算ができれば満点です。
この2つの計算問題以外の出題はありません。
ちなみに,測量士補試験では「方向角」の知識だけで十分ですが,似ている用語として「方位角」というものがあります。方向角が座標北からの右回りの角度を表すのと異なり,方位角では真北からの右回りの角度を表します。
真北の角度は座標北の角度と異なります。また,方位磁針が示す磁北とも異なります。つまり,北を表す方向には,座標北,真北,磁北の3つがあるわけです。詳細は試験に出ないので割愛。
■点検計算
多角測量の山場です!捨ててる人が多いのですが,「知識」と「計算」に分けて整理して得点できるようにしましょう。それぞれの見出しに<知識>とか<計算>と書いておきます。
まず,点検計算ってどういうものかというと,再測が必要かどうか現地で判断する計算のことです。
選定したすべての点検路線について,水平位置と標高の閉合差(既知点間を結合した差)や標準偏差を計算して,許容範囲内に収まっていればOK,収まっていなければ再測です。
1 点検計算の工程<知識>
点検計算は例外なく以下の工程になります。
① 標高の点検計算
② 距離の補正計算(基準面上の距離およびX・Y平面に投影された距離の計算)
③ 偏心補正計算
④ 座標の点検計算
最大のポイントは,「標高」が最初で,「座標」が最後。
では,もうちょっと中身を1つずつ見ていきましょう。
2 標高の点検計算<知識>
上の図のように,既知点→新点→既知点を結んだ点検路線の閉合差を求めることで標高の点検計算をしていきます。
この点検路線ですが,すべての既知点は1つ以上の点検路線で結合させる必要があります。路線はなるべく短くして,路線の1つ以上が他の点検路線と重なっている必要があります。図のとおりですね。
3 距離の補正計算<知識>
そもそも,TSで観測した距離というのは誤差を含んでいます。なので,気象補正などをする必要があるんですね。
まず,このTSの距離の観測誤差ですが,観測距離に比例するものとしないものに分別することができます。
気象誤差と変調周波数誤差だけが,距離に比例します。
TSはレーザを飛ばして距離を測るので,気象要素は光の速度を変えてしまうので,距離が長くなると誤差が増えます。変調周波数誤差では基準となる光の波長が変わっちゃうので誤差が距離に比例します。ま,細かいハナシはよいので,気象誤差と変調周波数誤差だけが距離に比例すると押さえてください。
ちなみに,気象要素の誤差ですが,公式はどうでも良いので,以下の表だけは押さえておきましょう。
4 偏心補正計算<計算>
本来だったら器械点から目標を直接視準したいところですが,間に障害物があって視通を確保できないことがあり得ます。そういう時に,点をずらして観測するテクニックが偏心です。計算して本来得るべき角度と距離に補正することを偏心補正計算といいます。
偏心補正計算には以下の3パターンがあります。
①角度の偏心補正計算(目標を偏心)
②角度の偏心補正計算(観測点を偏心)
③距離の偏心補正計算
②はほぼ出題がないので捨てましょう。
①は正弦定理と微小角のラジアンを使って解くことが出来ます。
それぞれ記事にしているので,正弦定理については「三角形に関する3つの定理」,微小角のラジアンについては「ラジアンを使う計算問題」をご参照ください。これで解けるようになります。
③については「三角形に関する3つの定理」で少し触れましたが,余弦定理を使わなくても微小角のラジアンで近似値を求めて正解することができます。ちょっとテクニカルな別解なので,また機会があれば記事にします。ちなみに,アガルートの「測量士補試験 | 2018合格目標 3時間で押さえる計算問題」ではバッチリ別解で解説してますので,気になる方は是非。
5 座標の点検計算<計算>
測量では真値の観測は不可能なので,標準偏差を利用して最確値の精度を確認します。最確値が出ていないと点検できないので,工程的には最後になるんですね。
で,ここでは標準偏差を求める計算問題が出題されます。こればっかりは標準偏差の式を覚えてないと得点できません。覚えておきましょう。
n=観測回数,v=残差です。残差とは,平均値と各観測値の差をいいます。
■成果等の整理
ここまでで観測が全部終了し,精度ある最確値が出ました。いよいよ納品です。
測量計画機関に提出するための品質評価と成果整理をおこなって,一連の基準点測量が終了です。
品質評価というのは,基準点測量成果に基づいて測量計画機関が要求する品質を満たしているかどうかを評価する作業をいいます。
成果等の整理というのは,測量成果や観測手簿,メタデータの作成など,観測作業の成果を整理する作業のことです。メタデータについてはミニ講座の「地図編集」の分野でやりましょう。
次回は「GNSS測量」の分野に入ります!