1か月で間に合わせる!測量士補ミニ講座③トータルステーション/作業工程
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ミニ講座3回目,いよいよ本日から「多角測量」の分野に入っていきます!
▼動画です!
■トータルステーション
前回までは「法規」でしたので,今回から測量の「中身」になります。
多角測量で使われる機械がトータルステーション,いわゆるTSです。
(ちなみに,「機械」は電気を使う測量機器,「器械」は電気を使わない測量機器というように漢字が使い分けられています。豆知識。)
TSは測距儀とセオドライト(トランシット)を組み合わせた最高に便利な機械です。ちなみに,もう測距儀とセオドライト(トランシット)が測量士補試験に出ることはありません。改変されていない過去問やテキストをお使いの方は,測距儀とセオドライト(トランシット)はTSに読替えましょう。
で,これがどういうモノなのかというと,光を反射するプリズムに向けてボタンを押すだけで,角度(水平角・鉛直角)と距離が同時に観測できる測量機器になります。ちなみに,データコレクタという別の機械が付いている(付けられる)TSもあります。データコレクタは観測手簿の代わりになるもので,自動的に観測値を記録することができます。
このTSでどういう風に観測するかというと,下の図のように,既知点(座標が分かっている既存の基準点とか)にTSを整置し(ちなみに,TSやレベルを地面に固定することを「整置」,覗いて目標を見ることを「視準」といいます。),別の既知点と新点(設置した新しい基準点とか)の角度と距離を観測していきます。
で,既知点と新点が観測したら,今度は新点にTSを整置し,別の新点を観測する。これを繰り返すことで,新しい基準点の位置を求めるわけです。
ま,つまり,角度と距離を測っていく。
1 角度を測る仕組み
TSの中にある分度器を電子的に読むことで角度を測ることができるのですが,角度を測るため,TSには可動部があります。全部で3軸。
①鉛直軸:水平方向に回転する
②水平軸:鉛直方向に回転する
③視準軸:視準する望遠鏡の中心の軸
この3軸がそれぞれ正確じゃなきゃ測量に精度が出せないので,定期的な点検・調整が必要な繊細な機械です。
公共測量には精度によって等級があり,1級から4級まであります。1級がもっとも要求される精度が高くて厳しい。測量士補試験では基本的に1級に求められる方法が出題されます。
TSを使った角度の観測は「方向観測法」といいますが,1級基準点測量では,水平角の観測は1視準1読定(1方向を見て,1回角度を観測する)を2対回します。
追回とは1回角度を観測した後,望遠鏡を180°回転させ,さらに2回目の角度を観測すること。
2 距離を測る仕組み
TSからレーザ(光)が発射されて,プリズムで反射して返ってきます。このレーザの往復する時間を内部の時計で計測して,距離を測ります。
TSを使った距離の観測は,1級基準点測量では,距離の観測は1視準2読定(1方向を見て,2回距離を観測する)を1セットとします。
でも角度の観測では2対回しなきゃいけませんでしたよね?ってことで,水平角観測の必要対回数(2対回)に合わせ,取得された距離の観測値をすべて採用し,その平均値を最確値とすることができるようになっています。
3 誤差
めちゃくちゃ大事な誤差のハナシ。
そもそも測量は観測するごとにわずかに異なった値になってしまいます。どんなに注意しても。本当の値(真値)は出せないんですね。なので,複数の観測値から,統計的に推定して,もっとも確からしい値を答え(採用値)とします。「もっとも確からしい値」を略して「最確値」。
ちなみに,測量では真値を求めることができないため,測量士補の問題文も「もっとも近いものを選べ」となっています。
で,この誤差には3種類あります。
1つ目が,観測機械が正常に機能していない場合や,観測者に固有のクセがある場合に一定の傾向で生じる「系統誤差(定誤差)」。
2つ目が,観測者がどんなに注意しても避けることができない「偶然誤差(不定誤差)」。
3つ目が,観測者の不注意によって生じる「過失誤差」です。
高い精度の測量をするためには,過失誤差はもちろんなくす。さらに,系統誤差を究明して誤差を取り除くことが要求されるわけですね。
さて,誤差の中でもTSの構造上発生する誤差を器械誤差といいます。
器械誤差の一覧がこちら↓
測量士補試験では,器械誤差の中で「望遠鏡の正反観測値を平均しても消去できないもの」,つまり,望遠鏡を180度回転させても正反の誤差が打ち消しあわないものを選ばせる問題が多く出題されます。
ポイントはいくつかあるんですが,とりあえず2つのポイントを押さえておけば問題は全部解けます。
①「鉛直軸誤差」は消去・軽減の方法がありません。これ,鉛直軸が傾いている,つまり,垂直にTSを整置できてないってことなんです。なので,鉛直軸誤差をなくすためにはTSを正しく整置しなおすことになります。ちなみに,3軸のうち,鉛直軸の誤差だけが正反観測値を平均しても消去・軽減できません。
②「目標像のゆらぎ」は観測回数を増やしても誤差の軽減しかできず,消去することはできません。
■作業工程
多角測量の作業工程は以下の流れで行われます。変わることはありません。
1 作業計画
まずはなにより作業計画。
でも作業計画を作成できるのは測量士補ではなく測量士。なので,測量士補試験では作業計画の深い問題は出ません。1つだけ覚えておきましょう。
「作業計画の工程では【平均計画図】を作成する」これだけ。
ちなみに平均計画図ってのは,次の選点作業で作成する平均図の案となる図です。地形図に既知点とか観測する新点の位置,観測する方向のイメージを書きこんだものです。
2 選点
選点とは,平均計画図に基づいて,現地調査をし,新点の位置を選定する作業のことです。
ここから現場に出るわけです。
実際に現地にいって,既知点に異常がないかとか,観測の前に確認しておきます。
選点の工程では【選点図】と【平均図】を作成します。
ちなみに,新点の設置場所としては,地盤が堅固で標識の長期保存に適した場所であり,通行の妨害や危険のないよう配慮した場所を選びます。他人の土地に永久標識を設置しようとするときは,土地の所有者または管理者からの建標承諾書も取らなきゃいけません。
安全なだけじゃなくて,設置した基準点は今後の公共測量でも使われることになるわけですから,将来の測量で利用しやすい位置に設置するのが理想です。例えば,既知点から新点を直接見ることができなければ,新点を測量で使うことはできません。ちなみに,直接見ることができる状態を「視通がある」なんて言います。
視通があるだけでなく,既知点も含めて配点密度が必要十分になるように,できるだけ均等になるよう設置することになります。
1本の観測路線でいえば,全体の路線長は極力短くし,節点数を少なく,辺の長さが均一になるのが望ましいですね。
3 測量標の設置
選点で決定した位置に永久標識を設置する工程です。
永久標識には必要に応じて固有番号などが記録されたICタグなんかもつけることができます。
永久標識を設置したら,【測量標設置位置通知書】と【点の記】を作成します。
次回は作業工程の続きです。
「機器の点検」と「水平角の観測」,「鉛直角の観測」です。