1か月で間に合わせる!測量士補ミニ講座⑩写真測量
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ミニ講座10回目!本日は「写真測量」分野を全部やりましょう!
具体的には「空中写真による写真測量」,「撮影」,「写真判読と現地調査」,「同時調整」,「写真地図作成」,それと「航空レーザ測量」ですね。
▼動画です。
写真測量とは,航空機から地上の写真を撮影し,撮影された空中写真を用いて数値地形図データを作製するものです。前回の現地測量では,かなり詳細な数値地形図データを現地で観測する作業でしたが,今回の写真測量ではぐっと大範囲の数値地形図データを空中からの写真で作成する作業です。
今回は写真測量だけでなく,写真地図の作成と航空レーダ測量をやります。これ,航空機を用いるという点で共通していますが,測量成果(最終的な成果物)が,写真測量が「数値地形図データ」,写真地図作成が「写真地図」,航空レーダ測量が「数値標高モデル」,と異なるんです。
■空中写真による写真測量
さて,空中写真による写真測量では,航空機から直接測量をおこなうのでなく,航空機から空中写真を撮影して,撮影された空中写真を解析することで,測量をやるやり方です。
もうちょっと具体的に言うと,重複する空中写真を重ね合わせることで,対象地域のステレオモデル(立体像)を作成していきます。で,ステレオモデルを現地での実際の地形と調整し,縮尺や位置を決定。調整したステレオモデルを平面に図化することで,数値地形図データを作成します。
トータルステーション(以下,TS)やGNSSを用いた現地測量と比べると,一連の作業で広範囲を一定の精度で測量をすることができるという特徴があります。
1 仕組み
ここでは,航空カメラを搭載した航空機を使います。航空カメラにはフィルムを使うものと,デジカメを使うものがあります。このデジカメですが,「GNSS/IMU装置」と組み合わせて使うことが多いです。
GNSS/IMU装置とは,その名の通り,GNSSとIMU装置を組み合わせたものなのですが,GNSSでキネマティック法による全地球上における航空機の現在位置を観測し,IMU装置(慣性計測装置)で空中写真の傾きを観測します。
位置と傾きを取得して,写真データと同期することで,作業の時間短縮化や効率化につながっています。
撮影された空中写真は地図のような正射投影ではなく,中心投影です。そのため,高塔や高層建物は写真の鉛直点から放射状に広がるように地物が撮影され,高さのある地物ほど写真上の像が長く写る特徴があります。
あとは,重複して撮影された2枚があると,両目の視差を利用することで,立体視をすることができます。これにより,地物の比高を判読することもできます。
2 作業工程
写真測量の工程は上図のようになっています。以下,1つずつ見てみましょう。
3 標定点と対空標識
写真測量では,撮影された写真が現地のどこなのか,関連付けをする作業を必要とします。
なので,撮影対象エリアに対応する点を用意します。この点が「標定点」です。
普通,標定点には基準点や水準点を用います。同時調整(後で説明します。)をするときは,原則5点(四隅付近と中央に1点)用意します。
でも空中から標定点を見るのは難しいので,空中写真から肉眼で判別できるように,「対空標識」というのを標定点に設置します。こんな感じ。
構造物を置くわけですから,土地所有者や管理者の許可を得る必要があります。対空標識の保全などのために,公共測量・計画機関名・作業機関名・保存期限を明記して,撮影作業完了後には速やかに現状を回復(回収)するものとします。
図にある対空標識のD型ってのは,建物の屋上にペンキで直接描くやり方です。
■撮影
さあ,準備ができたところでいよいよ撮影です。航空機から空中写真を撮影する作業です。
デジカメで撮影された空中写真はデジタルデータなのでそのまま後続の作業に流せますが,フィルム航空カメラで撮影されたアナログ写真は空中写真用のスキャナを使ってデジタルデータにします。
1 縮尺の計算
当然かも知れませんが,撮影高度が高い写真ほど,1枚の空中写真に写る範囲は広くなり,縮尺が小さくなります。同じように,撮影高度が高いほど,地上画素の寸法は大きくなります。
縮尺の計算は測量士補試験で計算問題として出題されます。この縮尺,実際の地物の長さと写真上の像の長さの比で表されるのですが,この比は画面距離と撮影高度の比でもあります。この比を使って問題を解くことになります。
ちなみに。撮影高度とひとことで言っても,海抜からの飛行高度である「海抜撮影高度」と,対象となる地物からの比高である「対地高度」の2つがあります。計算問題でもこれらを混同しないように注意しましょう。
また,地物の長さでなく,デジタル航空カメラの画素数で縮尺を考える問題が出題されることもあります。この場合,写真に写った地物を画素数×画素寸法(素子寸法)で考えることで,地物の長さで考える場合と同様に解くことができます。本当に,この問題だけは様々な出題パターンがあるんですが,いずれも比を用いることで解くことができるので,落ち着いて考えてください。色々な過去問をやって慣れておくといいです。
2 オーバーラップ
写真測量ではステレオモデルというのを作成するんですが,このステレオモデルを作成するためには「重複した」空中写真を撮らなければなりません。
そこで,効率的に重複した空中写真が撮影できるよう,航空機を一定高度・一定速度で測量地域内を東西に横断させるように飛ばし,一定間隔で撮影していきます。
このとき,連続した写真は重複部分(オーバーラップ)が出るようにします。また,東西のコースも重複部分(サイドラップ)が出るように飛行します。要は,縦にも横にも重なった写真を撮るということ。
このオーバーラップですが,必ず50%以上必要になります。傾き等を考慮して,標準は60%。
50%以上のオーバーラップがあると下の図のようにすべての地域が重複して写る写真が撮れるんです。
こっから用語がバンバンでてきます。
1枚の写真のうち,中心点のことを「画面主点」といいます。で,連続する2枚の写真の画面主点の位置の差を「撮影基線長(主点基線長)」というのですが,撮影基線長は「重複しない部分の幅」と等しくなります。
撮影基線長は2枚の空中写真の間隔になります。航空機の飛行速度が分かれば撮影基線長から航空カメラのシャッター間隔も計算することができます。
① パスポイント
重複した空中写真を撮影するときに,各写真の連結に使われる点に「パスポイント」と「タイポイント」があります。測量士補試験では頻出です。
パスポイントというのは,「同一コース内の連続する空中写真に共通する点」のことをいいます。
パスポイントを重ねることで,空中写真をコース方向に連結させることができるわけですね。
パスポイントは,重複部分の中央(画面主点付近)と両端(撮影基線に直角な両方向)に1点ずつ計3箇所以上設定します。原則として,このパスポイントで囲まれた区域内を各モデルでは数値図化することになります。
② タイポイント
タイポイントというのは,「隣接2本のコース間の接続に用いられる点」をいいます。
隣接コースと重複している部分で,空中写真上明瞭な場所に,直線上にならないようジグザグに並ぶように配置します。ジグザグというのがポイント。直線上に配置しては連続性が保たれません。
また,タイポイントはパスポイントで兼ねることもできます。
3 比高の計算
前述のとおり,空中写真は中心投影ですので,高さのある地物ほど写真上の像が長く写る特徴があります。また,同じ高さの地物でも,写真の鉛直点(中心)から離れるにつれて写真上の像は長く写るようになります。
これを利用すると,空中写真から地物の比高(高さ)を測定することができちゃうわけです。これも計算問題では頻出です。
解き方はこれ↓
「地物の高さ:対地撮影高度=写真上の像の長さ:鉛直点から像の先端までの距離」
つまり,地物の高さを知りたい場合,(対地撮影高度×写真上の地物の長さ÷鉛直点から像の先端までの距離)を計算すればいいってことです。
■写真判読と現地調査
撮影した空中写真から,現実の地物の種類を判断することができます。これを「写真判読」といいます。
成果物である数値地形図データには地物の種類も埋め込まなければなりませんからね。
1 写真判読
空中写真の写真判読のポイントは以下の通りです。
2 現地調査
写真判読でもよく分からなかった場合,現地で種類を調査することになります。これを現地調査といいます。
撮影した写真に対して現地調査をおこないますので,工程的には撮影の後になります。
で,この現地調査。いきなり現場にいっても「何を調査するの?」ってなりますから,現地調査の前には「予察」が必要になります。
予察とは,現地調査の着手前に,空中写真,参考資料などを用いて,陰影やハレーションなどの障害により写真判読では不明・不確実で図化できない部分をあらかじめ分類しておく作業です。
予察を元に現地調査をしていくわけですが,空中写真撮影後の変化状況や,市町村界など写真には写らないものについても現地調査をすることになります。
ちなみに,調査結果の整理や点検は現地調査期間中におこないます。現地調査の必要な部分が出てくるかもしれませんからね。
■同時調整
同時調整というのは,デジタルステレオ図化機を用いて,パスポイント,タイポイント,標定点の位置と標高を測定する作業です。
これをすると,ステレオモデルを作成することができ,平面への図化が可能となります。
1 デジタルステレオ図化機
デジタルデータにした(元々デジタルデータだった)空中写真をこいつに入れます。
デジタルステレオ図化機というのは,まぁパソコンに三次元マウスが付いてるものだと思ってください。
数値地図化データを画面上で確認することができます。
標定点と重ね合わせたり,GNSS/IMU装置が観測した外部標定要素(カメラの位置や傾き)を用いて同時調整をすることで,空中写真を数値図化します。
2 数値編集
で,この数値図化した「数値地図化データ」を現地調査の結果に基づいて編集することを「数値編集」といいます。
計測データの取得漏れ,誤り,接合部分の位置不一致などを訂正して,「編集済データ」を作成します。
その後,「編集済データ」に対して,補備測量を加味した補測編集をおこない,「補測編集済データ」を作成することになります。
最終的に,「補測編集済データ」から「数値地形図データファイル」を作成し,品質評価を経て,成果である「数値地形図データ」となっていきます。
作業の内容よりも,「数値図化」→「数値編集」→「補測編集」→「数値地形図データファイル作成」という作業の流れを特に押さえてください。
■写真地図作成
注意!上までが「写真測量」で,成果物は「数値地形図データ」です。
ここからの成果物は「写真地図」ですので,混ざらないように!
写真地図というのは,空中写真をデジタルステレオ図化機を使って正射変換し,必要に応じてモザイク画像を作成したものです。地図みたいな写真だと思ってください。
作成された写真地図は地理情報システムにおいて,説明画像や背景画像などにも使われます。
1 写真地図作成の作業工程
標定点や対空標識を設置後,空中写真の撮影をおこないます。で,撮影された空中写真をもとに同時調整をおこない,デジタルステレオ図化機により数値地形モデル(DTM)を作成していく流れになります。
写真測量も写真地図作成も航空機を用いて空中写真を撮影する作業は同じなので,作業工程は似ています。写真地図作成は図面を作成することがないので測量や現地調査の工程がありません。比較して覚えましょう。どちらも作業工程の出題があります。
写真地図は「オルソフォト」とも言われるんですが,簡単に言うと正射投影された空中写真をつなげ合わせたものです。正射投影されているため,通常の空中写真(中心投影)と異なり,実体視をすることができません。
また,写真地図も方位と縮尺をもつ地図ですので,地形図と同様に図上で距離を計測することができます。でも,等高線に相当する表現がないため,図上で傾斜を計測することはできません。
2 正射投影
空中写真は中心投影ですので,写真地図にするためには正射投影に変換する必要があります。
この変換には,写真区域の標高データである「数値地形モデル(DTM)」を使います。
3 モザイク
複数の正射変換された空中写真をつなげ合わせて写真地図を作成する場合,重複する部分の位置や色が異なることがあるんですね。これを調整し接合する技術を「モザイク」といいます。
1枚の写真地図は複数の空中写真を貼りあわせて作成します。単純に並べただけだと色調の違いなどからパッチワークのようになってしまうので,1枚の大きな空中写真として違和感のないように,モザイク処理をしていくわけです。
■航空レーザ測量
注意!上までが「写真地図作成」で,成果物は「写真地図」です。
ここからの成果物は「標高データ」ですので,混ざらないように!
航空レーザ測量というのは,航空機から地上に向けてレーザパルスを発射し,地表面や地物で反射して戻ってきたレーザパルスを解析することで「地形の標高データ」を高密度・高精度に観測する測量です。
1 航空機
写真測量でつかう航空機と同様,GNSS/IMU装置とデジタル航空カメラを搭載しています。さらに,レーザパルスを発射する「レーザ測距儀」も搭載しています。
レーザで測るのになんでカメラを搭載してるの?ってなりますが,これは後述のフィルタリングや点検のためです。デジタル航空カメラから地上の写真も同時に撮影します。
2 作業工程
航空レーザ測量では,レーザによって「地表面と航空機の間の距離」を取得します。なので,これを標高データに変えるため,調整用基準点での計測値との比較やコース間での標高値の点検をし,精度検証と標高値補正をすることで,「オリジナルデータ」を作成します。
このオリジナルデータですが,地表面だけでなく,構造物とか植生で反射したデータも含まれるんですよね。なので,地表面「のみ」のデータにするために,不要なデータを削除します。これを「フィルタリング」といいます。フィルタリングすることで,「グラウンドデータ(地表面だけのデータ)」を作成することができます。
ちなみに,不要なデータを削除しているので,値がない部分が出てきます。なので,「内挿補間」をすることで,「DTM(数値地形モデル)」に変換することが多いです。
内挿補間ってのは,前後の標高から間の距離を推定して補間する作業のこと。
3 数値標高モデル
先の文章には「DTM(数値地形モデル)」が出てきましたが,これはメッシュ状(ラスタ形式)の標高データです。測量士補の試験問題には他にも「DEM(数値標高モデル)」や「DSM(数値表層モデル)」がありますが,同じものだと思っても差し支えないです。
(気になる方向けにちょっと解説しておくと,DEMとDTMはともに建物や樹木などの高さを除いた地表面の標高のデータ(グラウンドデータ)であり,DSMは建物や樹木などの高さを含めた表層の標高データです。DEMとDTMは同義ですね。)
これらはメッシュ状なので,格子間隔が小さくなるほどデータ数が大きくなり詳細な地形を表現できることになります。
でも,DEMを作るのに航空レーザ測量が必要かと言うとそうではありません。衛星からも作れますし,地形図の等高線から作成することもできます。デジタルステレオ図化機を使って空中写真からも作れますよ。
逆にDEMを利用すると地形の断面図や等高線データを作成できるので,これを応用して2つの格子点間の視通を判断したり,傾斜角を計算したりもできます。
あとは,空中写真の正射投影への変換や,地理情報システムではDEMを使った水害による浸水範囲のシミュレーションなどにも利用されます。
■車載写真レーザ測量
さて,こっからは自動車(車両)を使ったレーザ測量です。
MMS(Mobile Mapping System)なんていうふうにも言われます。
これは自動車にGNSS/IMU装置やレーザ測距儀,計測用カメラなどを搭載して,道路とか周辺の地形・地物を広範囲かつ短時間でデータ取得する技術です。
搭載機器が航空レーザ測量と似てますね。なので,2つの技術の差を理解することが大事です。
航空レーザ測量が上空から地表面の標高データを観測するのに対し,車載写真レーザ測量では自走した自動車から横方向に地物を観測するため,航空レーザ測量では計測が困難である電柱やガードレールなど,道路と垂直に設置されている地物のデータ取得に適しており,トンネル内や高架下などの上空視界が確保できない場所においても数値地形図データが作成できるという強みがあります。
ちなみに,車載写真レーザ測量で作成する数値地形図データの地図情報レベルは500および1,000を標準としますので,より詳細な数値地形図データを作成することになります。
どういう仕組みで測量していくかというと,レーザスキャナを車載していて,こいつで周辺にある地物の平面位置と高さを連続して観測し,三次元点群データを取得していきます。
この三次元点群データを使用すると,構造物の形状の三次元モデルなんかも作成することができます。
さて,自動車を使ったレーザ測量を説明しましたが,国土地理院では写真測量や三次元点群データの取得方法として,無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle 通称ドローン)が利用できるようマニュアルや安全基準の案を公開しています。
ドローンはまだ試験には出ないと思いますが(実務に浸透していない技術は出題しないと明確に書かれています。),もし出題されたことを考えると1点だけ,知っておきたいことがあります。
まぁ大問1つでドローンは出題されないでしょうから,出るとすれば車載写真レーザ測量の大問の1肢で出題されるでしょう。それは,ドローンを用いた写真測量で作成される数値地形図データの情報レベルは「250および500」であるということ!超詳細で局所的な地図を作成する用途が想定されているってことですね。
次回は「地図編集」の分野をやります!
地図記号やGISについてですね。いよいよ本試験超直前ですが,頑張りましょう!
(ちなみに,どうでもいいですが地図編集の分野は私が大学・大学院とずっと研究していた専門分野でもあります。)