ミニ講座6回目,本日から「GNSS測量」の分野です!
「GNSSによる基準点測量」と「GNSS測量における注意点」,「基線ベクトル」と,GNSS測量の分野を全部やってしまいましょう!!

▼動画です。

■GNSSによる基準点測量

トータルステーション(以下,TS)を用いるのと同様,GNSSでも基準点測量をおこなうことができます。測量士補試験では,GNSSの特徴やTSを使った多角測量との違いが出題される傾向にあります。

1 GNSSのしくみ

GNSS測量は,観測機械としてGNSS測量機を使います。これは,衛星の電波を受信するためのアンテナと受信機です。(ちなみに,昔はGPS測量といわれていました。)

で,このGNSS測量機を既知点と新点に整置することで,点間の基線ベクトルを解析します。
基線ベクトルというのは,三次元X・Y・Z軸による距離・方向・比高のこと。得られた基線ベクトルを元に,新点の座標値を明らかにしていくわけです。
衛星の電波を受信して,その受信信号から基線ベクトルを求めることを基線解析といいます。

TSによる多角測量と異なり,点から点を直接視準する必要がありません。なので,観測点間の視通がなくても点間距離と方向を求めることができるのがGNSS測量の強みであり特徴となります。また,観測に光波を用いないため,霧や弱い雨にほとんど影響されずに観測をおこなうこともできます。
ただ,GNSS測量であっても,1点だけの位置を求めることはできません。TSによる多角測量と同様,点間の相対的な位置関係(距離と方向)を求めることになります。

2 作業工程

ごらんの通り,TSの多角測量と工程はまったく一緒です。
ただし,選点の工程において,新点を設置する予定位置の上空視界の状況確認が必要など,GNSS測量特有の問題もあります。

3 GNSS測量の種類

GNSS測量は以下のように分類することができます。

でも,単独測位やDGNSS(ディファレンシャル)は精度が悪いため,測量には使えません!
よって,干渉測位だけくわしく押えておきましょう。

①スタティック法
既知点と新点の複数の観測点にGNSS測量機を整置し,同時に4衛星以上の信号を受信して基線解析をする方法です。
GNSS測量の種類の中でもっとも精度が高い方法がスタティック法であり,1~2級基準点測量ではスタティック法しか使用することができません。超重要です。

②短縮スタティック法
別名,高速スタティック法。
スタティック法と同様に既知点と新点の複数の観測点にGNSS測量機を整置しますが,観測時間の短縮のため基線解析に衛星を多く組み合わせる方法です。
高速なのが利点ですが,3~4級基準点測量でしか使用できません。

③キネマティック法
これは既知点にGNSS測量機を固定し,連続して観測をおこないます。
で,もう1個のGNSS測量機を持ち歩いて新点を移動しながら(要は2台でいけるってことです。)各点で観測を行う方法です。
基線解析は観測後にまとめておこないます。
こちらも3~4級基準点測量でしか使用できません。

④RTK法(リアルタイムキネマティック法)
キネマティック法と同様,既知点に1台固定し,もう1台を持ち歩いて新点を観測していく方法です。
キネマティック法との違いは基線解析の方法。キネマティック法では観測後にまとめて基線解析していましたが,RTK法では移動観測時に省電力無線機で固定観測点にデータを送ることで,リアルタイムに基線解析をすることができます。
こちらも3~4級基準点測量でしか使用できません。

⑤ネットワーク型RTK法
これは電子基準点の「リアルタイムデータ配信業者」が算出して配信している補正データを,小電力無線機などにより移動観測点で受信することにより,リアルタイムに基線解析をすることができる方法です。
他の方法と異なり,固定観測点を必要としないため,1台のGNSS測量機でいけます。
こちらも3~4級基準点測量でしか使用できません。

■GNSS測量における注意点

TSと同様,GNSS測量でも誤差を消去・低減するための観測上の注意事項があります。

1 GNSS測量機の注意点

①上空視界

電波を受信する必要があるため,上空視界を妨げる障害物がある場所では観測できません。

②電波障害

観測点の近くに強い電波を発する物体(高圧線・テレビ電波塔・レーダー・通信局)があると,電波障害を起こし,観測精度が低下することがあります。
ちなみに,エンジンがかかっている自動車も電波を発生させるので注意。
TSと比較すると気象要素の影響は少ないので,観測点での気温や気圧の気象測定をする必要はありませんが,雷は電波を発生させるため注意が必要です。


③マルチパス

マルチパスというのは多重反射のこと。
観測点の近くに金属製品や高層建築物があると,これらに反射した電波を拾ってしまいます。
仰角の低いGNSS衛星を使用すると,それだけマルチパスの影響を受けやすくなるため,観測精度が低下します。
真上から電波がきたほうが建物とかに反射しにくいですからね。

④アンテナ

アンテナの位相特性による誤差の軽減のため,アンテナの向きは各点でそろえて整置します。
位相特性というのは,GNSS測量機の構造上しょうがないことなんですが,GNSS衛星からの電波の入射角によってアンテナの受信位置(高さ)が変化してしまいます。この特性はアンテナの機種ごとに異なります。
ですので,この位相特性をそろえるため,アンテナの向きはそろえます。一方,アンテナの高さはそろえる必要ありません。
また,衛星からの電波を受信するのはGNSS測量機のアンテナ部分ですので,アンテナから測点までの高さはミリメートル単位で計測しておく必要があります。

2 衛星の注意点

法改正がおこなわれた部分ですね。
ちなみに,測量士補試験では実務に浸透した測量技術から出題されますので,陳腐化した過去の測量技術からは出題されません。ですので,法改正には他資格試験より特に敏感になっておく必要があります。例えば,ミニ講座的にちょっと先の分野の話ですが,「アナログ図化機」とか「刺針」とか書いてあるテキストや過去問はヤバイです。注意してください。

さて,話がそれましたが,電波を発信する衛星(GNSS衛星)には,アメリカのGPSをはじめ,日本の準天頂衛星(QZS)やロシアのGLONASSがあります。
各観測法で使用する衛星は下の表のようになってます。

ちなみに,GPS衛星と準天頂衛星は同等と扱われています。GLONASS衛星も加えて観測する場合は,それぞれ2衛星以上用いなければなりません。

①衛星の配置

衛星からアンテナまでの距離の誤差が観測位置に与える影響を少なくするため,衛星は上空に可能な限り広がり,片寄らない配置であることが望ましいです。そのため,事前に衛星の飛来情報を確認しておくことが極めて重要です。
多角測量では基準点の座標がなければ新点の座標が求まらないように,GNSS測量では,衛星の軌道情報は観測方法にかかわらず解析作業には不可欠です。

②電離層と対流圏

電離層や対流圏を通る際に速度が変化することで誤差(伝播遅延誤差)が発生しちゃいます。
迎角が低い衛星を使用すると横断距離が長くなるため,電離層と対流圏による誤差が増大します。

電離層の影響は特に10km以上の長距離基線の場合影響があるため,周波数の異なる2周波(L1帯とL2帯)を受信できるGNSS受信機を使用して,2周波で基線解析を行う必要があります。(ちなみに,10km未満の基線解析でも,2周波を受信できるGNSS受信機を使用することは可能です。)

■基線ベクトル

GNSS測量で観測される基線ベクトルは,点間の相対的な位置関係です。
致心直交座標に基づくため,直接求められる高さは楕円体高ですので,国土地理院が提供するジオイドモデルより求めたジオイド高を引くことで標高を計算していきます。
ジオイドについては「1か月で間に合わせる!測量士補ミニ講座②測量の基準/基準点成果情報」を参照してください。

1 点検方法

同一時間に複数のGNSS測量機によっておこなわれる観測のことを「セッション」といいます。
GNSS測量の点検は,同じ観測点間の基線ベクトルを重複して観測し,その格差を比較すること,異なるセッションにより形成された多角形の基線ベクトルの総和(環閉合差)が0に近くなっているかを確かめることで点検されます。
要はセッションを重ねるのが重要。

2 基線ベクトル計算
これは完全に計算問題の話です。
GNSS測量の計算問題として,ベクトル成分から2点間の三次元上の斜距離を計算する問題が出題されるんですね。ここではピタゴラスの定理を2回使用して解きましょう。
まずは,XYの平面での2点間の斜距離をピタゴラスの定理で計算します。これはあくまでも平面上の斜距離なので,この斜距離とZ(比高)を使ったピタゴラスの定理を解くことで,最終的な三次元上での斜距離を導いていきます。

ちなみに,ちょっとしたテクニックとして,基準となる点の座標を(0,0,0)とすると,他の座標値は基線ベクトル成分の値と同じになりますよ。


では,次回は「水準測量」の分野に入りましょう!
今回は「GNSS測量」を一気にやりましたが,次回から「水準測量」を前後編にわけてやります。

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令和5年度アガルート受講生の土地家屋調査士試験合格率は63.41%(全国平均の6.56倍)

令和5年アガルート受講生の測量士補試験合格率は95.2%(全国平均の2.96倍)

令和5年度アガルート受講生の測量士試験合格率67.61%!(全国平均の6.56倍)

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