ミニ講座11回目!本日は「地図編集」分野です。

▼動画です。

さーて,地図編集というのは何か簡単にいうと,「地図を使って別の地図をつくる」ということです。
既存の地形図や数値地形図データをもとに,より地図情報レベルが大きい数値地形図データを新たに作成します。

■地図編集

新たに作る地図のことを「編集図」といいます。で,この元になる既存の地図のことを「基図」といいます。
基図の縮尺はは,編集図の縮尺よりも大きく(基図は編集図より詳細),かつ,最新の地図を採用します。

1 地図の種類

さて,ひとことに「地図」といっても,色々な種類があります。
分類方法はたくさんありますが,とりあえず一般図と主題図を押えておきましょう。

① 一般図

例は国土地理院発行の地形図です。
特定の目的をもたず,汎用性があります。地形の状況や交通施設・建物などの地物の状況,地名・施設の名称などを図式にしたがって表示し,多目的に使用できるように作成されています。
図式というのは,地図を表現する際のルールみたいなもんです。地図で表示する記号や文字などの表現様式を規定しています。

② 主題図

一方,主題図は特定の目的(主題内容)に特化した地図です。観光マップとか。
主題図は一般図を基図として作られることが多いです。

主題図の中で,特に測量士補試験に出題されるのが「ハザードマップ」。地理情報システム(GIS)を使って作成され,自然災害の想定被害や範囲,避難所なんかが表示されています。

地形図などの一般図では地図記号として統一された記号しか使用することができませんが,主題図ならば,例えば「災害時に災害の危険から身を守るための緊急避難所」と「一時的に滞在するための施設となる避難所」で別の記号を表示することもできます。こっちの方が「自然災害に対する避難」という特定の目的のためならば実用的ですよね。

2 取捨選択・転位・総描

上で説明した「図式」に関することです。
基図の内容をそのまま縮小しても,ただ字や記号が小さくなっただけで,非常に見にくいですよね。そこで,「取捨選択」・「転位」・「総描」という3つの調整をすることとで,編集図を使いやすくします。

① 取捨選択

簡単に言うと,「重要じゃないものは捨てる。」です。

単純に縮小して,基図にある情報を全部編集図に採用するのではなく,重要度の高い地図情報を残し,その他の情報を適切に省略していきます。これが地図編集における「取捨選択」です。

重要度の高い地図情報というのは,例えば,公共性のある地物,学校とか病院ですね。こういうのは残します。逆に,建物が密集しているところなんてのは,建物の向きと並びを考慮して取捨選択されます。

② 転位

簡単に言うと,「重要じゃないものは移動させる。」です。

単純に縮小すると地図記号が重なってしまいます。
そこで,地形や地物の重要度に応じて,相対的位置関係を乱さないように必要最小限の量でこれらを移動させていきます。これが「転位」です。

一般的な重要度は以下のとおり。

電子基準点・三角点>海岸線・一条河川>道路>鉄道>二条河川・がけ等自然物>建物・構造物等の人工物>植生>行政界・注記等の無形物

もうちょっと細かくみていきましょう。

・「基準点(三角点・電子基準点)の転位は許されない。」
 基準点は動かしちゃだめです。地図の骨格中の骨格ですから。でも水準点は転位されちゃうことがあります。

・「有形の自然地物(河川,海岸線,水部など)と人工地物(道路,鉄道など)では人工地物を転位する。」
 自然VS人工の場合,自然を優先します。自然地物の方が恒久的ですからね。

・「骨格となる人工地物(道路,鉄道など)とその他の人工地物(建物など)ではその他の人工地物を転位する。」
 道路は建物に優先します。これも,道路など骨格となる人工地物の方が恒久的ですから。建物はぽんぽん移り変わっても,道路はそう簡単に移動しません。

・「有形線(河川,道路など)と無形線(等高線,境界など)では無形線を転位する。」
 線VS線の場合,実際に形あるものを優先します。等高線や行政界なんてのは目に見えません。河川や道路の方が実際に地図を使ったときに正しい位置にあると役立ちます。

③ 総描

簡単に言うと「デフォルメする。」です。

単純に縮小すると形状が複雑になって読みづらくなります。そこで,適宜簡略化して表示することを「総描」といいます。総合描画の略です。

例えば,山間部の細かい屈曲のある等高線などは,地形の特徴を考慮して総描することになります。

3 注記

地図に書かれた文字のことですね。
地域,人工物,自然地物などの名称,特定の記号のないものの名称,標高値,等高線数値などには文字が振られます。

■地図の投影法

法規のところでもやったんですが,地球というのは球体です。でも,地図は平面。球体のものを平面に表示しようとすると,どうしてもひずみが生じてしまいます。
そこで,このひずみを解消しようとする知恵が「投影法」というやつになります。

投影法にはいくつかあるんですが,ひずみの要素や大きさは投影法によって異なるため,地図の用途や描く地域,縮尺に応じた最適な投影法を選択する必要があります。

ところが,完全にひずみを解消することはできないんです。
みずみなく表現できるものとして,「角度」,「距離」,「面積」があります。それぞれひずみを取った投影法には「正角図法」,「正距図法」,「正積図法」という名称がついてます。
(ちなみに,正距図法といっても,特定の点間距離を正しく表すことができるに過ぎません。任意の2点間の距離を正しく示す平面の地図はあり得ません。)

下の図をみてください。

実は,正距図法と正角図法,または正距図法と正積図法の性質を同時に満たすことが可能です。
例えば,「正距方位図法」なんてのは,地図上の各点において特定の1点からの距離と方位を同時に正しく描くことができます。ただ,注意していただきたいのが,「正角図法と正積図法の性質を同時に満たす」ことは絶対にできません。

また,投影方法(投影面)としては,地球の形を球として,直接平面に投影する方位図法,地球に円筒をかぶせてその円筒に投影し,切り開いて平面にする「円筒図法」,地球に円錐をかぶせてその円錐に投影し,切り開いて平面にする「円錐図法」などがあります。

① UTM図法

さて,よく試験で出る投影法を2つ見ていきましょう。

まずは,UTM図法(ユニバーサル横メルカトル図法)です。
国土地理院が出している1/25,000地形図などの中縮尺図で採用されてます。

この「UTM図法の地図」と「測量で使われる平面直角座標系」は,正角横円筒図法のガウス・クリューゲル図法で描かれています。
正角図法なんで,両極を除いた任意の地点における角度を正しく描くことができます。

角度が重要な海図なんかもメルカトル図法で作成されてますね。

② 平面直角座標系

前の法規のところでも平面直角座標系に触れましたが,ここでは「地図編集」の分野で出やすいポイントをもう一度押えておきましょう。

上にも書きましたが,平面直角座標系もUTM図法と同じく,正角横円筒図法のガウス・クリューゲル図法で描かれています。

平面直角座標系では,日本全国を19の地域に分けて範囲を定義しており,それぞれの座標系原点の経緯度を定義してます。
座標系のX軸は座標系原点において子午線に一致する軸とし,真北に向かう値を正(+)。一方,座標系のY軸は,座標系原点において座標系のX軸に直交する軸とし,真東に向かう値を正(+)としてます。

縮尺係数はX軸において0.9999,東西に約90km離れたところで1.0000です。

■地形図の読図

測量士補試験では,地形図を読む問題がでます。地形図を読むことを「読図」っていいます。
問題を解く過程で正しく読図できないと間違えちゃうような問題も出題されます。

1 地図記号

地図記号には基準点を表すもの,建物の種類を表すもの,道路・線路を表すもの,植生を表すものに大きく分けることができます。

①基準点を表す地図記号

②建物の種類を表す地図記号

「市役所・町村役場・官公庁」や「小中学校・高等学校」,「警察署・交番」,「噴火口・温泉」などが混同しがちですね。

例えば,「市役所」←「町役場」,「高校」←「小中学校」,「警察署」←「交番」みたいに,上位のものは○で囲まれるので,記憶のきっかけにしてください。

また,工場や桑畑など,1/25,000地形図で使用されなくなった地図記号もあります。一方,老人ホームや図書館,風車,電子基準点などは見たことない方もいらっしゃるんじゃないですか?これらは近年新しく採用された地図記号になります。


③道路・線路を表す地図記号

④植生を表す地図記号

2 等高線

地形図上で標高を表すために考えられたのが,等高線です。

地表面の「標高が等しい地点」をつないで作ります。だから,等高線を実際の地形に引くと,水平になるわけですね。この等高線を見ることで,地形の特徴を判読することができます。

で,この等高線にもルールがあります。
このルール,以下のように縮尺によって異なるんですが,測量士補試験では1/25,000の地形図が出題されるので,これだけは覚えておきましょう。

まず,等高線は「主曲線」で書かれます。1/25,000の地形図なら「10m」ごとです。
で,見やすくするために,「5本おき」に,線を太くします。これが「計曲線」です。1/25,000の地形図なら「50m」おきになります。
また,緩い傾斜地みたいに,10mおきの主曲線では表現できないような微地形を表したい場合,「補助曲線」という破線が使われることもあります。

この等高線,「間隔が広いところは傾斜が緩やか」で,「間隔が狭いところは傾斜が急である」と読み取ることができます。あとは,等高線が正しく書けているなら,山の尾根線や谷線と直角に交わり,等高線が途中で2本以上に分岐したり交わったりすることはありません。等高線が閉合する部分には山頂やおう地(窪んだ土地)となります。

ちなみに,等高線以外の標高を示す記号として「標高点」があります。地図記号に出てきたやつですね。標高点は,主要な山頂,道路の主要な分岐点,主な傾斜の変換点などに選定されて,なるべく等密度に分布するように配置されます。

①段彩図

等高線と似たような高さ表現として,「段彩図」というのもあります。こちらは線ではなく色で標高を表現したものです。画像検索すると分かりやすいです。

段彩図は等高線のルールと違って,等間隔で色を変える必要がありません。
なので,傾斜が緩やかなところは色間の間隔を狭くするなどして,等高線にはない地図表現をすることもできます。

3 地形図の読図

こちらは計算問題として出題されます。このために,測量士補試験では定規を持ち込むことができます。試験の携行品として忘れがち,かつ,ないと問題が解けないので,忘れないように!普通の定規なので,忘れたとしても試験会場近くのコンビニで調達できます。(わたしも忘れて駅ビルで買いました。)

■地理情報システム

地理情報システム(GIS:Geographic Information System)とは,地理的位置を手がかりに,位置に関する情報を持った空間データ(地理空間情報)を総合的に管理・加工し,視覚的に表示することで高度な分析や迅速な判断を可能にする技術です。私の専門。

下の図のように,「位置」で色々な情報を重ねて分析するわけです。

測量士補試験では,地理情報システムの機能に関する問題が出題されます。
地理情報システムの機能として,空間データの重ね合わせができる点に特に注目しましょう。一方,航空カメラや人工衛星から撮影された空中写真などの画像からは市町村の行政界など現実に存在しないものは写らないので,地理情報システムを用いても抽出することはできません。

1 データの形式

地理情報システムでは,位置情報をもっていれば,空中写真とか測量結果とか様々な空間データを使うことができます。
このデータの保存形式に「ラスタデータ」と「ベクタデータ」があります。相互に変換することができますが,変換すると画質や精度が必ず落ちます。

① ラスタデータ

ラスタデータとは,図形を一定の大きさの画素(点)の集合で表現するデータ形式です。
点の集合なので,それぞれの点に座標値や属性をつけることができます。
例としては,衛星画像データやスキャナを用いて取得した地図画像データなどです。

② ベクタデータ

ベクタデータとは,図形を座標値と方向で表現するデータ形式です。
点,面,線を表現することができ,それぞれに属性を付加することができます。座標値をもっているため,閉じた図形を表すベクタデータを用いて図形の面積を算出することができますし,道路中心線のベクタデータを用いれば,道路ネットワークを構築することによって,道路上の2点間の経路検索なんてのもすることができます。
細部測量で観測された点で作られたデータなどはベクタデータの例ですね。

2 空間データ

地理情報システムで使う位置情報をもったデータのことを「空間データ」といいます。

空間データは座標値や住所など,位置情報と結びついたデータです。座標を持っているので,複数の空間データを重ね合わせることができます。数値地形図やDEMなども空間データの1つです。

さらに,この空間データを使いやすくする仕組みとして,「クリアリングハウス」や「地理情報標準(JPGIS)」というのがあります。

① クリアリングハウス

地理情報システムを使って,「こういう空間データが欲しい!」と思ったら,その空間データを検索して入手する必要がありますね。そこで,検索しやすくして目的の空間データを見つけやすくする仕組みがクリアリングハウスです。

空間データの作成者がメタデータを登録し,利用者がそのメタデータをインターネット上で検索することができるようになります。

メタデータとは,データのためのデータであり,空間データの作成者・管理者などの情報や,品質に関する情報などを説明するための様々な情報が記述されているものです。空間データの品質評価の結果をメタデータに記載することで,その空間データの利用者が,他の目的で利用できるかどうかを判断することが容易になるわけです。

② 地理情報標準

今度は空間データをつくるための仕組みです。

空間データの作成を行政が作業計画機関となっておこなう場合,空間データの仕様書として「空間データ製品仕様書」を作成することになります。空間データを作成するときにはデータの「設計書」として,利用するときにはデータの「説明書」として利用することができます。

そして,空間データを異なるシステム間で相互利用する際の互換性の確保を主な目的に,「地理情報標準」が定められました。これにより,異なる整備主体で整備されたデータの共用,システム依存性の低下,重複投資の排除などの効果を期待することができます。

3 GIS識別コード

測量士補試験では,ベクタデータで作成された道路中心線や街区面の模式図から,その後のGIS識別コードを付ける作業の内容を答える問題が出題されます。
問題文を読み,図を確認することで答えが出せるので簡単な問題になります。線が道路中心線で,道路中心線で囲まれた面が街区です。


次回はいよいよミニ講座最終回!!「応用測量」の分野となります。

測量士補試験は過去問が繰り返し出題されますから,とにかく過去問をやりましょう。細かい知識が出題されることがありますが,このミニ講座で合格十分の知識となります。全部分かれば満点取れるレベルです。

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令和5年度アガルート受講生の土地家屋調査士試験合格率は63.41%(全国平均の6.56倍)

令和5年アガルート受講生の測量士補試験合格率は95.2%(全国平均の2.96倍)

令和5年度アガルート受講生の測量士試験合格率67.61%!(全国平均の6.56倍)

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