令和2年度司法書士試験の出題からみる「次の調査士試験の出題傾向」について
本ページにはプロモーションが
含まれていることがあります
司法書士試験で,令和2年度調査士試験の出題を考えるに値する問題をセレクトしてみました。特に不動産登記法。
調査士試験でも出題が考えられるような問題も含めています。
正解肢は白文字にしていますので,選択して反転したりしてみてください。
1.〔民法〕
不動産の物権変動に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。
オ Aがその所有する甲土地をBの詐欺によりBに売却してその旨の登記がされ,Bが詐欺の事実について善意無過失のCに甲土地を売却してその旨の登記がされた後,AがBとの間の売買契約を取り消したときは,Aは,Cに対し,甲土地の所有権のAへの復帰を対抗することができない。
正解:〇
民法総則での改正民法による出題は,この肢のみです。司法試験・予備試験の錯誤の問題と併せて,「今まで過去問で出ていた問題」を中心に学習するのが絶対です。債権の分野では改正民法による出題のオンパレードでしたが,それは司法書士試験の話です。改正民法の論点については最高でも条文レベルで押さえておけば良いです。なお,相続の分野では改正民法による出題はありませんでした。
2.〔司法書士法〕
司法書士に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。
ア 司法書士の登録を受けている者は,兼業している土地家屋調査士の業務を懲戒処分により禁止された場合であっても,引き続き司法書士の業務を行うことができる。
正解:×
「土地家屋調査士」の文言が入っていたのでセレクト。調査士法と書士法で欠格事由となる近似業務で双方に入るのは,土地家屋調査士×司法書士だけです。
3.〔不動産登記法〕
次のアからオまでの登記のうち,常に付記登記によってするものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。
エ 賃借権が敷地利用権である場合にする敷地権である旨の登記
正解:付記登記ではない。
敷地権である旨の登記がつくことで,以降が建物の登記記録と一体化するため,敷地利用権が所有権でも地上権でも賃借権でも「敷地権である旨の登記」は主登記です。
4.〔不動産登記法〕
代位による登記に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。なお,判決による登記については,考慮しないものとする。
ア Aが所有権の登記名義人である甲土地について,平成22年4月2日受付第1234号においてBを登記名義人とする抵当権の設定の登記がされた後,Aが死亡した場合において,抵当権の実行による競売の申立てが受理され,亡Aの債権者Bが代位によりAの法定相続人であるC及びDを登記名義人とする相続による所有権の移転の登記を申請するときは,「代位原因を証する情報は,平成22年4月2日受付第1234号をもって本物件に抵当権設定登記済みであることにより添付省略する」旨を申請情報の内容とすることにより,代位原因を証する情報の提供を省略することができる。
正解:×
抵当権の登記名義人が所有権登記名義人に代位して表示の変更登記をする場合には,代位原因証明情報は不要という先例があります(抵当権者であることが登記記録から分かるから)。ですが,本問の所有権登記名義人についての相続登記については代位原因証明情報を省略することはできません。この場合,抵当権者が競売申立てをしていることを立証する必要があります。登記記録から,その点は判断できませんから。
5.〔不動産登記法〕
不動産の登記申請における添付情報に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。
オ 会社法人等番号を有する法人が役員の変更の登記を申請したが,その登記が完了する前に抵当権の設定の登記を申請する場合は,当該法人の代表者の資格を証する情報として,会社法人等番号に代えて当該法人の作成後1か月以内の登記事項証明書を提供しなければならない。
正解:×
改正点について結構シビアに出題してきました。1月から3月になったので誤りです。でも,「しなければならない。」と限定していますが,会社法人等番号を提供してする方法もあるので,その点でも誤りです。
6.〔不動産登記法〕
不動産登記における審査請求に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。
ア 登記官の処分に不服のある者は,審査請求とは別に,処分の取消しの訴えを提起することができる。
イ 登記官の処分についての審査請求は,登記官を経由してしなければならない。
ウ 審査請求をした者は,当該審査請求の裁決があるまでは,いつでも口頭で審査請求を取り下げることができる。
エ 登記官は,処分についての審査請求を理由があると認めるときは,審査請求の日から3日以内に,意見を付して事件を当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に送付しなければならない。
オ 登記官を監督する法務局又は地方法務局の長は,審査請求を理由があると認めるときは,相当の処分を命ずる前に登記官に仮登記を命ずることができる。
1 アイ 2 アオ 3 イエ 4 ウエ 5 ウオ
正解:4
調査士試験でも通用する問題です。令和元年度は例年問19の筆界特定が記述式で出題されたためズレましたが,今年は審査請求に係る問題は問18で出てくるでしょうね。
7.〔記述式・不動産登記法〕
登記識別情報を提供できずに,本人確認情報を作成・提供する登記でした。この辺りは,調査士試験でもいつ出題されてもおかしくない状況です(天下一記述会では論点の1つにしました。小問2もまるごと割いています。)。
番外編.〔不動産登記法・一部省略〕
次の文章中の( 1 )から( 5 )までの空欄に次のアからオまでの語句の中から適切なものを選んで文章を完成させた場合に,( 1 )又は( 2 )に入る語句の組合せとして正しいものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。ただし,文章中の[ A ]及び[ B ]には,「〔Ⅰ〕」又は「〔Ⅱ〕」の語句のうちいずれか適切なものが入るものとし,異なる数字には同一の語句は入らないものとする。
〔Ⅰ〕 登記義務者が現存するが,共同申請の例外としてその申請を必要としない登記
〔Ⅱ〕 〔Ⅰ〕以外の登記
その具体例として,[ A ]に該当するものは,( 1 )及び( 2 )であり,[ B ]に該当するものは,( 3 ),( 4 )及び( 5 )である。
今回,司法書士試験には個数問題がありませんでした。これは調査士試験の傾向でもあります。この番外編の問題は,個数問題を形を変えて選択問題にした形式です。個数問題が出なくなったわけでなく,形を変えて出題される可能性はあります。
その他,試験問題とは別の点で参考になったところと言えば,コロナ禍の影響で,午前と午後の間,教室になるべく留まらないようアナウンスがあった会場もあるようです。また,例年よりも午前試験の受験者が増えることが予想されるため,「勉強場所」と「直前にやること」について,準備不足にならないよう,しっかりと準備・整理しておいてください。
それでは!