」と一言でいっても,色々な基準となる北が存在します。調べてみても決定版と言えるものがなかったので,整理してみました。

まず,北には3種類あります。

座標北
平面直角座標系などの座標系で表す北,これが「座標北」です。地球楕円体面上の北極を指しますが,平面直角座標系は横円筒図法の直角座標ですから,座標北はすべて真上を指すことになり,座標北がⅩ軸と平行になります。

真北
地球楕円体面上の北極を指すのが,「真北(しんぽく)」です。北極の1点を指すため,平面直角座標系では,原点の西にいるのか東にいるのかで方向が異なります。原点上のX軸の延長線(子午線)に北極があるため,原点の方向を向きます。なので,原点よりも西側の点では,座標北よりも東側に真北がきて,原点よりも東側の点では,座標北よりも西側に真北がきます
つまり,原点上の点であれば,真北と座標北は一致することになります。

磁北
方位磁石のN極が差す方向が,「磁北」です。磁極の位置や,磁気異常の影響で,真北とは一致しません。日本列島では,磁北の向きは,真北よりも約6~9°ほど西にずれています(7°とするのが一般的)。これを「西偏」と言います。
日本列島で西偏(偏角0°の南鳥島を除く全ての地域で西偏)なので,原点との位置関係は関係ありません。

そのため,これら3つの北を図示すると,このようになります。原点を挟んで西側と東側を1枚にしてみました。

座標北はどちらも真上,真北は原点方向に収束し,磁北はどちらも西偏です。

さらに,これら北の方向の差にも名前が付いています。1つずつ見ていきましょう。

偏角
まず,真北と磁北の差を「偏角」と言います。路線測量の偏角と混乱しないように磁気偏角といったりもします。
右回り(東偏)をプラス,左回り(西偏)をマイナスで表すので,「-7°」あるいは「西偏7°」のようになります。

子午線収差角
偏角が真北と磁北の差であるのと同じように,真北と座標北の差を「子午線収差角」と言います。子午線収差と言うこともあります。
こちらも右回りがプラスなので,原点よりも西側では子午線収差角はマイナス,原点よりも東側では子午線収差角はプラスになります。

真北方向角
子午線収差角と同じ真北と座標北の差ですが,読んで字のごとく,真北の方向を方向角で表したものを「真北方向角」といいます。真北の方向を平面直角座標系の座標北からの方向角で表したものなので,原点よりも西側では真北方向角はプラス(右回り),原点よりも東側では真北方向角はマイナス(左回り)になります。つまり,子午線収差角と同じ角度になるが,符号が逆になることになります。

ちょっとここで方向角が出てきたので,角度についても言葉を整理しておきましょう。

方位角
「方位角」は,真北(子午線)から右回りの目標までの水平角です。

方向角
「方向角」は,座標北(X軸方向)から右回りの目標までの水平角です。こちらは方位角と異なり,座標北からの角度ですので,原点上の子午線上以外の場所ですと,方位角と方向角は異なることになります。
方位角に真北方向角を加えると,方向角になります。同様に,方向角から真北方向角を引くことで,方位角になります。

磁方位角
「磁方位角」は,磁北方位角とも言いますが,磁北から右回りの目標までの水平角です。磁北の方向が違えば,(方位角に比べると若干ですが)同じ方向角であったとしても異なることになります。
方位角から偏角(-)を引けば,磁方位角になります。同様に,磁方位角に偏角(-)を加えることで,方位角になります。

混同しがちな言葉ですけれども,図を見てイメージしながら,定義をしっかり理解してみてください。


それでは!

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