調査士試験では過去問演習が重要です。でも,過去問演習といっても色々なやり方があります。
私は,自分の経験・本試験の研究結果・合格者の声…色々勘案した結果,調査士の過去問を用いたアウトプットに最適なのは,「年度別に学習すること」という結論をもっています。

調査士試験の択一の特徴ですが,「20問という他資格として比較的少ない出題数」,「85%以上正解しないと安定して合格できない」というのがあります。だからこそ,「年度別に学習すること」の重要性が上がります。この資格の特徴ですから,必ずしも他資格には当てはまりません。ですが,この記事を見ているのは「調査士試験に合格したい人」だと思いますので,一般的な資格の勉強法とは異なります。

ではでは。なぜ,「過去問が重要なのか?」と併せて,「年度別に学習すること」の意味をお話できればと思います。

まず,調査士に限ったハナシではありませんが,本試験に出題される「試験範囲」というのはどのように把握されるものでしょうか?
下の図を見てください。この器が試験範囲です。


【01】
調査士試験の内容を定めた調査士法6条には以下のようにあります。

筆記試験は,不動産の表示に関する登記について必要な次に掲げる事項に関する知識及び技能について行う。
1 土地及び家屋の調査及び測量
2 申請手続及び審査請求の手続


もうちょっと踏み込んだ調査士規則4条は以下のとおりです(要約)。

試験は,次に掲げる事項で不動産の表示に関する登記につき必要と認められるものについて行う。
1 民法に関する知識
2 登記に関する知識
3 平面測量に関する知識及び能力
4 作図
5 その他


ということで,ざっくりです。ざっくりでは対策するのが難しいです。

では,どのように試験範囲を把握するのかというと,やっぱり過去の出題履歴です。
強引に言えば,「過去問で出た範囲が試験範囲」。そう認識して,皆さん学習するわけです。


【02】
この青い三角形(▲)が出題された過去問です。もちろん,範囲全部を網羅しているわけではありませんが,出題された過去問から,間が推測されるので,グルっと囲った範囲を「試験範囲」とすることができています。
ですが,本試験では完全にこの器の中から問題が出題されるわけではありません。
次の図を見てください。赤い三角形(▼)が本試験での出題です。


【03】
「想定していた」試験範囲から外れたのが1個,右側にありますね。
でも,「みんなが想定していた試験範囲を超えた出題である」というのは,試験委員も分かって出題しています。
また,過去とまったく同じではない(が,試験範囲に含まれている)というのもあります。左から2個目の赤い三角形です。
これを3つの類型に分類してみましょう。


【04】
過去問直撃がAランク。直撃ではないが,試験範囲にある応用がBランク。そして,外れているのがCランクです。
この3つにすべて分類することができます。
3つの類型の定義付けをもう少し整理してみましょう。

Aランク:基礎
過去問知識・標準知識が直に問われている問題。
知識やパターンをそのまま当てはめできれば解ける問題です。


Bランク:応用
過去問知識・標準知識をベースに,思考力を要求し,制度趣旨等を理解しないと解けない問題。
要は単純に覚えているだけ・知っているだけでは解けない問題です。
逆に言うと,「理由」や「ルール」を身に着けていれば,現場でも答えが出せる問題。


Cランク:難問
難問という言い方は微妙ですが,要は試験範囲を超える問題です。
誰も知らないような知識を要求します。


調査士試験は誰でも合格できる試験ではありません。難しいには理由があります。
その理由の多くを占めるのが,「Cランクの誤解」。マジでこれです。
どういうことかと言うと,まず①,「BランクとCランクの区別がついていない」方が多いです。つまり,現場で答えが出せるBランク問題なのに,試験範囲を超えているCランクと誤解し,手が出せないタイプです。
次に②,「Aランクを軽視する」方です。しっかりとした基礎がない限り,Bランクは解けません。Aランクをしっかりと学ぶということは,「Aランクしか解けない」から脱却して,「Bランクを考えられるようになる」ために大変重要です。
この①と②をしっかり理解し,対策が打てるようになれば,合格がぐっと近づきます。いわゆる「試験慣れ」している人は,ここが自然と身についています。
では「BランクとCランクの区別をつけ」,「Aランクを軽視しない」ためには,どのような学習をすればよいのでしょうか。この2つをつなぐと,「Aランクを重視することで,Bランクが解けるようになれば良い」ということになります。これができれば合格です。間違いありません。
調査士試験は実務家登用試験の性質があります。では,法務省が考える「調査士になれる人」というのは,どういう人でしょうか?次の3つの中のどれでしょうか。
A「基礎しか知らない人」
B「思考力があり,制度趣旨等を理解している人」
C「誰も知らないような知識を知っている人」
明らかにBですよね。
特定の予備校でしか教えない知識を知ってるかどうかで合否が決まったら駄目ですし,基礎しか重視しないのも駄目です。試験制度として駄目ということです。
相対試験だからといってCランクの問題で差をつけようとするのは大きな間違いです。遠回り。試験はAランクとBランクの問題で合格できるように作ってあるというのを意識すべきです。
なので,調査士試験では,Bランクの問題で合否が分かつようにしてあります。Cランクの問題は端から蚊帳の外。単に受験者の平均点を下げ,A・Bランクの重要度を上げるための問題です。
現に平成30年度本試験では,1問Cランクの問題が混入していますが,択一で19問取り,記述式で基準点を超えていれば合格点に届きます。いわば,この1問は消化試合。得点してもしなくても合否に関わらない問題です。ちなみにAランクだけで択一の基準点に届きます。やっぱりBランクの問題で合否が分かつようにしてありました。
だから,「Aランクを重視することで,Bランクが解けるようになれば良い」ということになるわけです。

ちょっと次の図を見てください。


【05】
テキストの内容で試験範囲が埋まってますね。テキストは過去問から作成するので,試験範囲は埋まります。ですが,ちょっとがありますね。これはBランク問題をカバーできない部分です。Bランクは思考力を要求する問題ですので,「考えれば答えがでる」のですが,「テキストに答えが直接書かれていない」ということがあり得ます。
といっても,テキストには間を埋める出題予想や発展論点を含んでいるので,未出のBランクを拾えることもあります。というか,拾えるようなテキストを作らなければなりません。現場で答えがだせるような「理由」や「ルール」を身に着けさせるようなテキストを作成し,講義すべきです。アガルートのウリです。この点の研究や勉強に講師は多くの時間をかけます。普通の受講生にはとても無理な時間をかけることができるので,予備校を使うメリットになっています。

ですが!
テキストを使っても,個人差が出ます。仕方ありません。これは想定すべきです。吸収できる知識にムラがでます。
こんな感じです。


【06】
赤と緑の三角形(▼)があります。両方ともテキストに書いてありますが,知識にムラがあるので,緑は取れても赤を落とします。満遍なくテキストに書いてある内容を押さえるのは難しいですし,現実的ではありません。もっと言うと,効率悪いです。しかも,実は知識には試験のムラがあるので余計やっかいです。
そこで,(やっとですが)過去問を用いたアウトプットで,これを実現するにはどうすればいいでしょう。
答えは,「過去問を膨らますこと」です。
次の図を見てください。


【07】
過去問を1つ膨らますことができれば,未出の応用Bランクの問題を迎え撃つことができるようになります。
ここまで深く追うためには,「1日1問復習できればよい」ぐらいの感覚です。
1日1問でいいの??終わらなくない!?と思われるかも知れませんが,大丈夫です。次の図です。


【08】
例えば,青い三角形(▼)が平成17年度試験で出題された1問だとします。
こいつを膨らませれば,知識の基を共通とする平成18年度や平成30年度の問題にも対応できます。1問が何問にも広がっていくイメージです。逆に,平成18年度や平成30年度の問題をやっていて平成17年度の問題の確認になるということもあります。もともとテキストでしっかり押さえられなかった論点でもあるので,1日1問の復習でもその費用対効果はとても大きくなります。
「20問という他資格として比較的少ない出題数」,「85%以上正解しないと安定して合格できない」
という調査士試験の択一の特徴もこれを後押しします。

で,注意しなければならないのがCランク問題。


【09】
確かに,出題された「当時」は,Cランクの問題は合否に関係ありません。それは前述の通り。
ですが,出題された以上,これはAランクに変化します。


【10】
直接同じ論点でAランク問題として出題される可能性もありますし,周辺論点がBランク問題として出題される可能性も出てきます。試験範囲が拡張されたと考えてください。つまり,「やらなくていい過去問」というのは調査士試験においてはありません。仮に,さらにそのCランク問題を応用したBランクランク知識が出題されたとしたら,図のようにテキストを外れていても取らなければ差が付きます。

あとは,この過去問を膨らます具体的なやり方ですが,「年度別に学習すること」を推奨します。
年度別,つまり択一20問を一気にやる。で,内もっともクリティカルな1問を復習する。というやり方です。
年度ごとに過去問をやる意味はなんでしょうか。
まず,調査士試験の特徴として,試験範囲が(割と少ない)20問で満遍なく構成されている。という点が挙げられます。また,出題のリズムが例年変わりませんので,このリズム感を習得するのにも役立ちます。


【11】
つまり,過去問を年度ごとに繰り返していくことで,早いローテーションで満遍なく試験範囲を周回することができるということです。分野別にも別の良さがありますが,分野別で周回すると,同じ論点に周ってくるまでの期間が長く,逆に周辺論点が近すぎます。


【12】
上の図で書かれた赤い枠のように,通常のテキストには書いてあるけど(試験範囲だけど),試験に出ないところをスキップできる良いムラも自然にできます。これが,調査士試験において択一を年度ごとに周回する意味です。

でも,「過去問だけで合格できる」というと多くの人が誤解します。「そんな簡単なの?」とか,「過去問なんてやってるよ」とかです。過去問を真の意味で学習する,というのは,簡単ではありませんし,「過去問が解ける」というレベルよりずっと上です。
確かに過去問だけやっていると飽きますが,本当に過去問が解けていますか?1日1問復習できるぐらいの負荷で学習されていますか?過去問が解けるというのは下の図です。


【13】
全然広げられていません。まだまだ過去問は広げられます。「過去問が解ける」というレベルでは,択一の基準点を超えられる程度で,合格点まで伸びません。赤い三角形(▼)がきたら落とします。
過去問を1日1問の深さで全部広げてみてください。下の図です。


【14】
繰り返し繰り返し,飽きますが,それでも愚直に過去問を掘り下げます。これでやっとBランクが撃ち返せるようになるための「理由」や「ルール」が身に付いていきます。
これが,正しい「合格するための過去問演習」です。実践すれば大きく伸びます。約束します。
未出のBランクを現場で考えられるようになります。
Aランクは瞬殺です。
Cランクをスルーできるだけの「区別」が付けられるようになります。

初学者であれば,この学習に時間をかけることが最短です。
ですが,中上級者の場合,どうしても掘り下げられない苦手な論点というのが自分の中に固着します。これはやればやるほど必ず出てきます。そこでおすすめなのが,模試です。諸刃の剣ですが,模試で出た苦手論点を身につければ,ピンポイントでの出題があったとき,基礎から広げるより一気に時間短縮して得点することができます。要は,扱い方次第。
下の図でいう赤い三角形(▲)論点を模試から拾えれば,そこへの出題(▼)に対して得点できるのです。


【15】
ですが,広がりが少なくなるので応用的に出題されたときに弱くなります。なので,赤い三角形(▲)をたくさん集めるのではなく,苦手論点に抑え,増えた時間を他の論点を広げるのに使うべきです。
初学者の場合,自分の苦手な論点をまだ正確に把握できないので,模試はおすすめしません。ですが,会場受験で「試験の場を体感する」というのは大アリです。
また,次の図のように模試で出題されたCランク問題が出題されたとき,撃ち返せるようになるかも知れません。


【16】
ですが,AランクとBランクの問題で合否が決まることを忘れてはいけません。Cランク問題を集めるような学習はやらないでください。遠回りです。時間に相当余裕があれば別ですが,Cランクを拾いにいくとAランクBランクが疎かになることは否めません。

ということで,長くなりましたが,以上が『調査士の過去問を用いたアウトプットに最適なのは,「年度別に学習すること」』という結論をもった根拠です。これが最短の道ですので,徹底して実践していきます。


それでは!

令和5年度アガルート受講生の土地家屋調査士試験合格率は63.41%(全国平均の6.56倍)

令和6年アガルート受講生の測量士補試験合格率は92.41%(全国平均の約3倍)

令和6年度アガルート受講生の測量士試験合格率77.78%!(全国平均の約6倍)

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