測量士試験の写真測量の問題ですが,近年は令和2年3月31日の作業規程の準則の改正から,UAV(ドローン)による写真測量の問題も出題されるようになりました。

UAVだと,有人航空機よりもオーバーラップとサイドラップが大きくなるので,今までの解き方をちょっと変える必要が出てきました。そこで,汎用性の高い,どんな重複度でも解ける方法を考えました。

こんな撮影条件で考えてみましょう。この記事では,「最少撮影枚数」を導くために必要なものだけ書いてます。

①計測対象範囲は,東西18km,南北13kmの平たんな地域とする。
②デジタル航空カメラは,画面の大きさ17,310画素×11,310画素とし,画面の短辺は撮影基線と平行とする。
③撮影基準面における地上画素寸法は20cmとする。
④撮影基準面における同一撮影コース内の隣接写真との重複度を60%,隣接撮影コースの空中写真との重複度を30%とする。
⑤撮影コースは東西方向とする。
⑥南北両端の撮影コースでは,撮影区域外を画面の大きさの20%以上含むように撮影する。
⑦各撮影コースの両端は,撮影区域外に各1モデル分撮影する。

試験問題でよくある有人航空機の条件です。

まずは,「1枚の空中写真で撮影できる範囲(撮影範囲)」を求めてみましょう。

地上画素寸法が条件③から,水平格子間隔20cmとなってます。これが,デジタル航空カメラの画面の大きさの画素数だけ縦横に並ぶわけですから,条件②の画面の大きさ17,310画素×11,310画素を掛けてあげて,長辺が17,310×20cm=3,462mで,短辺が11,310×20 cm=2,262mが1枚の撮影範囲となります。

次に,「航行区域の短辺」を求めます。「航行区域」という用語はなく,中山の造語です。計測対象範囲に,範囲外の部分を加えた「航空機がカバーしなければならない範囲」を意味します。これを考えてあげることでぐっと分かりやすくなります。

通常は,最少コース数を求めるため,航行区域の短辺だけ考えてあげればよいです。長辺も考慮する必要がある場合は,後述します。

計測対象範囲の短辺(南北)は,条件①から13km=13,000mですが,航行区域には,条件⑥から計測対象範囲の短辺の両端に撮影区域外を画面の大きさ(空中写真の撮影範囲の大きさの長辺)の20%以上含む必要があるため,航行区域の短辺は,13,000+3,462×0.2×2=14,384.8mとなります。20%を×2しているのは,両端に(2つ)含む必要があるからです。

図にするとこんな感じですね。

そして,この航行区域をカバーする「最少撮影コース数」を次に求めます。

航行区域の短辺(南北)が14,384.8mであり,撮影範囲の長辺(南北)が3,462mです。

コース数をNとおくと,Nコースあたりの撮影範囲は,条件④からサイドラップを30%とするため,3,462+(N-1)×(3,462×0.7)mとなります。

もしコース数Nが1だったら,撮影範囲長辺の3,462mが撮影範囲になりますが,Nが1増えていくごとに,サイドラップしない部分(コース間の距離)が増えていくことになります。

なので,コース間の距離(3,462×0.7)を1コース目を除いたコース数(N-1)だけ,撮影範囲長辺の3,462mに加えています。

あとは,3,462+(N-1)×(3,462×0.7)mが航行区域の短辺である14,384.8mを超えるNを求めてあげれば,それが最少撮影コース数となります。つまり,(14,384.8-3,462)÷(3,462×0.7)+1を計算すればよいです。

計算すると,5.0507…となりますが,コース数は自然数(正の符号の整数)となるので,5.0507…以上の自然数である,6コースとなります。

最後に,「1コースあたりの撮影写真枚数」を求めて,最終的な「最少撮影枚数」をだしていきましょう。

まずは,写真の枚数の前にモデル数を考えます。

モデル間の距離(撮影基線長)は,条件④からオーバーラップを60%とするため,2,262×0.4=904.8mとなります。これが計測対象範囲の長辺(東西)をカバーしていればよいので,計測対象範囲の長辺である18km=18,000mを割ると,18,000÷904.8=19.8938…となります。ですが,モデル数は自然数(正の符号の整数)となるので,19.8938…以上の自然数である,20モデルとなります。

ただし,条件⑦に,「各撮影コースの両端は,撮影区域外に各1モデル分撮影する。」とありますから,両端に(2モデル)加えてあげる必要があるので,20+2=22モデルが,1コースあたりのモデル数となります。

モデルは写真の重複部分なので,例えば,1モデルつくるためには2枚の写真が必要になります。2モデルつくるためには3枚の写真,3モデルつくるためには4枚の写真が必要になるので,撮影写真枚数=モデル数+1になります。

1コースあたりのモデル数が22モデルなので,1コースあたりの撮影写真枚数は,22+1=23枚です。

あとは,最少撮影コース数が6コースなので,23×6=138枚最少撮影枚数求めるべき答えになります!

いかがでしたでしょうか?

実は,撮影計画の問題には,もう一つバリエーションがあり,それは条件⑦が「各撮影コースの両端に,撮影される範囲のすべてが計測対象範囲の外となる写真を撮影する。」となっているものです。この場合,最少撮影コース数を求めるところまでは同じですが,1コースあたりの撮影枚数を求める方法が異なります。これは,航行区域の長辺をコース数を求めるように考えてあげればokです。

あまり出題されませんが(1回だけ出題されたことがあります。),一応やっておきましょう。条件⑦だけ変わります。最少コース数を求めるところまでは一緒です。

⑦各撮影コースの両端に,撮影される範囲のすべてが計測対象範囲の外となる写真を撮影する。

まず,「航行区域の長辺」を求めます。

計測対象範囲の長辺(東西)は,条件①から18km=18,000mですが,航行区域には,条件⑦から計測対象範囲の長辺の両端に撮影区域外を画面の大きさ(空中写真の撮影範囲の大きさの短辺)のすべてを含む必要があるため,航行区域の長辺は,18,000+2,262×2=22,524mとなります。撮影範囲の短辺を×2しているのは,両端に(2つ)含む必要があるからです。

そして,この航行区域の長辺をカバーする「最少撮影枚数」を求めていきます。

航行区域の長辺(東西)が22,524mであり,撮影範囲の短辺(東西)が2,262mです。

撮影枚数をNとおくと,N枚あたりの撮影範囲は,条件④からオーバーラップを60%とするため,2,262+(N-1)×(2,262×0.4)mとなります。

もし撮影枚数Nが1だったら,撮影範囲短辺の2,262mが撮影範囲になりますが,Nが1増えていくごとに,オーバーラップしない部分(モデル間の距離・撮影基線長)が増えていくことになります。

なので,モデル間の距離(2,262×0.4)を1枚目を除いた枚数(N-1)だけ,撮影範囲短辺の2,262mに加えています。

あとは,2,262+(N-1)×(2,262×0.4)mが航行区域の長辺である22,524mを超えるNを求めてあげれば,それが1コースあたりの最少撮影枚数となります。つまり,(22,524-2,262)÷(2,262×0.4)+1を計算すればよいです。

計算すると,23.3938…となりますが,撮影枚数は自然数(正の符号の整数)となるので,23.3938…以上の自然数である,24枚が,1コースあたりの撮影写真枚数となります。

あとは,最少撮影コース数が変わらず6コースなので,24×6=144枚最少撮影枚数。求めるべき答えです。

モデル数を2つ余計に取るか,写真を2枚余計に撮るかで,最少撮影枚数が異なってきます。

ここまでできれば完璧ですね。



それでは!

令和5年度アガルート受講生の土地家屋調査士試験合格率は63.41%(全国平均の6.56倍)

令和5年アガルート受講生の測量士補試験合格率は95.2%(全国平均の2.96倍)

令和5年度アガルート受講生の測量士試験合格率67.61%!(全国平均の6.56倍)

資料請求で講義とテキストの一部を無料でプレゼント!

1分で簡単無料体験(※会員登録後お申込みいただくと視聴できます)

資料請求で講義を無料体験